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芽唯は、下から来た車を避けようとしたが、その黒塗りの高級SUV車は、彼女らの近くで停まった。
「じゃぁありがとねー」
おばさん達は、次々にその車に乗っていく。
「一体何者で、何だったの?…」
立ち尽くす芽唯と店員の方へ、スーツの男性が近づいて来た。
40才くらいで七三分けの真面目風の男性だ。
「この度はありがとうございました。余命1ヵ月ということは聞かれたでしょうが。どうか秘密にして頂く方向でお願いいたします。当社の株価にも関わりますので、これで…」
スーツの男性は、芽唯に小切手を差し出した。
そこには、1000万円と書いてあった。
「え、いや…、そんな…」
芽唯は、驚いて咄嗟に断ろうとした。しかし、よく考えると、母は喜ぶかもしれないとも思った。
スーツの男性は、黙った芽唯に、真剣な表情で言う。
「このお金は、当社にとって大した額ではございません。遠慮なさらずに受け取って頂けた方が、こちらも安心です。あ、少なければ検討いたしますが。…でも1000万でもいいもんですよ。使い方はですね。半分は賭け事や投資に使って、後はパーッと豪遊をしてですね…」
「「ははははははっ」」
芽唯とレジ王子は、またハモって爆笑した。
芽唯は、彼とツボが同じだったことが何だか嬉しかった。
「いや、大丈夫です。何も言いませんから」
「えぇっ。では1200万…」
スーツの男性の口が、手で塞がれた。
おじいさんの手だった。
「車に乗ってろ。バカ者…」
スーツの男性は、ペコペコと頭を下げながら去って行った。
「お、おじいさん、余命って…」
おじいさんは笑窪を作る。
「あぁ、何個かの臓器が限界でな。…ま、じゃからこそ、ここには、来たかったんじゃ。人生最後の快晴の空じゃったからな。これだけは後悔したくないと思っててな…。それでまぁ、コンビニでは迷惑をかけたな」
「あ、いえそんな…」
芽唯とレジ王子は、軽く頭を下げた。
ポン…
おじいさんは、芽唯の肩を軽く叩いた。
「後は、お主らに託したぞ。セカイの全員の夢を繋いで、みんなのために、いいセカイにしてくれよ。それが誠の夢じゃぞ」
「いや…、私には荷が重過ぎますけど…」
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