第1章

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 バルガスは先輩で、コネも金も力もウェラーより持っている。何より刺激的な玩具と、その遊びの存在を教え、秘密倶楽部に誘ってくれたのは彼だ。だがこんな時間に突然使いを寄越すのは、どうも彼の性格にそぐわない気がする。しかし秘密倶楽部に関する事ならありえるのかもしれない…… 「そのチンピラはどこにいる?」 「このインディアン・リバーレイクに来ています。この別荘から4ブロック先の公園で待機しています。どうします?」  ……追い返す事も、消す事もできます…… と言外に含んでいた。この別荘には、特別の私的ボディーガードがいる。このボディーガードは知り合いの民間軍事会社で訓練を受け、高い戦闘力を持ちどんな命令でも従う。  髪を拭き終えるまで沈黙していたウェラー。拭き終えた時、決断した。 「用件を聞き、お前が判断してくれライアン」  ライアンは黙って会釈し、部屋を出て行く。ウェラーは部屋にある冷蔵庫からビールを取り出した。  時折興奮する息子の笑い声が聞こえた。秘密の地下室は防音加工しているのだが、よほど玩具遊びに興奮しているらしい。  ……ジュニアにはちょっと早い遊びだったかな……?  今遊んでいる玩具が壊れないか…… あれは高貴な遊びで、優雅さと優しさを持って、玩具を壊さず楽しむべきものだ。もっとも、最近手に入れた玩具は元々半分壊れていたし、遊びのための仕込みはよく調教されている。ドラッグもあるし、死ななければそれでいい。どうせ高い金を払ったわけではない。  ビールを半分ほど飲み終えたとき、レスラーが再び部屋に戻ってきた。 「どうだった?」 「ミスター・バルガスは、ジェームズ様が先日手に入れた玩具を借りたいと申しております。そしてその代わりに、新しい商品…… 玩具用ではなく特上の愛玩用ですが、それを貸してもいいとの事です」 「秘密倶楽部の子か……」 「独自のルートで手に入れた物だそうですが大変な極上品とのことです。私も確認しましたが、ジェームズ様好みかと思います。リスクはありますが確かに非常に上質な商品です」  そういうと、ライアンは懐の中から携帯端末を取り出し、一枚の画像を表示しジェームズに示した。その画像を見たウェラーは一瞬で表情を変え、食い入るように画面を見た。 「これは…… 極上品だな。まだ幼いが…… だが、素晴らしい」
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