第1章

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11  インディアン・リバーレイクは避暑と冬を楽しむための高原にある別荘地だ。別荘客のための店や別荘管理を生業にしている住民が住んでいるが、基本人気が少ない町だ。別荘も山や湖近くは密集しておらず、森の中に転々と豪奢な別荘が建っている。警察は小さな保安官事務所で、常勤の保安官補は二人だ。彼らは定時に町をパトロールするだけで別荘の持ち主や別荘での出来事に関心は持っていない。ただ、多くの別荘所有者は金持ちで、セキュリティーのため監視カメラは沢山あった。  ユージ所有の二台の車はジェームズ=ウェラーの別荘から2マイル離れた森の中で停車していた。ここは監視カメラやセキュリティー・カメラもない場所で、過去にラテンスキーが<棺桶>を引き渡したのもこの場所だった。 「よし、ラテンスキー第一関門突破だ。後は指示通りやればいい」 「俺はそれで無罪放免になるんだろうな」 「結果を出せばな。司法取引してやる。結果次第で大分軽くしてやろう」  拓がラテンスキーの服や体に盗聴器と小型カメラをセットしていた。FBIの最新機器で、非常に小型で高性能だ。盗聴器は腕時計、ベルト、シャツの三箇所、カメラはサングラスと顔の腫れに貼ったガーゼの中に仕込んだ。どれも市販の金属探知機では引っ掛らない。サクラがユージのラックトップでその調整をしていた。 「ジェームズ=ウェラーが<マリア>を握っているという証言を引き出せ。ついでにアラン=バルガスの話を引き出せば、お前の罪が全部見逃してもらえるかもしれない」 「アラン=バルガスが少女趣味のヘンタイっていう話はアンタらの作り話だろ」  ラテンスキーの言葉に、ユージは一瞥しただけで答えない。  ウェラーの知人というだけでアラン=バルガス議員を選んだのではない。実はバルガス議員もマック捜査官の報告書に名前が挙がっていた。バルガス議員のほうが容疑者として高い候補にあり、FBI本部では内偵対象になっていた。この際両方立件できれば、コールの機嫌も多少はよくなるだろう。 「余計なことは知らないほうがいい。お前の仕事はジェームズ=ウェラーの別荘にいるボディーガードの配置を見ること、話を合わせて<マリア>を確認する事だ。無駄口には気をつけて巧くやれ。後、銃撃戦になったら余計なことはせず頭を下げてその場で伏せていろ。勝手に銃を取ったり触ったりもするな。裏切れば俺がお前を殺す」
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