第1章

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「実はNYで今事件が起きている。裏社会の暴れ者が、少女売春組織を荒らしまわっている。バルガス議員は今NYがいるのは知っているだろう。そしてバルガス議員は…… その…… 夜の相手を欲しがっている。もちろん、ただのコールガールじゃなくて、特別な…… よく調教された少女だ。で…… ウラジミールから俺がアンタのところの御用達だと知って連絡してきた。それで俺に仲介役を……」 「君ごときにそんな大役を?」 「俺の口が堅いのは、アンタがよく知っているだろ? 俺が何度アンタのところに<花>や<棺桶>を届け、壊れたアレを処分してきた?」 「荷物が少女だとは君にも報せていなかったはずだが」 「輸送中や処分の時、何も目に入らなかったとでも思うのか? ウラジミールもその事はよく知っている。彼はロシアン・マフィアの有力者の一人で絶大な力を持っているのはアンタだって知らないワケじゃねぇーだろ? ま、それ以上はアンタも聞かないほうがいいぜ。ウェラー議員にとっても」 「…………」 「写真で見せた少女はかなり上物だろ? バルガス議員に依頼で元KGBのオルト=モロゾフがロシアで手に入れた孤児だ。10万ユーロ支払い調教した。だがNYでの騒ぎでまだロシア国内にいる。秘密倶楽部の好みでウェラー議員の玩具を借りられれば、あの娘をレンタルしてもいいそうだ。勿論騒動が収まった後日ということになるがな」  レスラーの表情は表面上変わらない。しかし内心は違った。 オルト=モロゾフはレスラーでも知っている有名なロシア=マフィアのボスで、違法風俗に売春の元締め、人身売買は勿論、暗殺に強盗を専門とする戦闘部隊を有し、ロシア南部で政府非公認の天然ガスを掘り巨万の富を有している。強欲で傲慢、そして狡猾な男だ。 ……バルガス議員はそんな男とも交流があるのか……  と、内心では別の意味で大いに感心し、バルガス議員に対する尊敬の度合いを見直していた。そうなると、このフリーの何でも屋のロシア人を粗略に扱わないほうが、自分たちにとっても得かもしれない。 「バルガス上院議員は、他にも色々相談したいって話だ。アンタじゃなく、ウェラー議員に直接だとよ。例の少女の確認のほかに話があるということだ。これ以上はアンタ相手には言えねぇーし、第一俺自身全て知らされていない。ただし、今回の件に限り、バルガス議員の窓口は俺限定だ」
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