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「一度は不覚を取りました。部下も大分やられましたが、もう大丈夫です。ロシア人とその共犯者は確保しました。引き渡しますか」
『引き渡す? どういう事だ。どうして通話がスピーカーになっている?』
「自分には協力者がいまして……」
『協力者? どういう事だ』
「実はこういう事もあろうかと、軍時代の仲間に連絡を取っておりました。信用できる男です。ロシア人の始末も警察への対応も終えたところです。ロドニー保安官補に連絡する必要もありません」
『独断でという点は問題だが、よくやった。捕まえたロシア人を連れてこられるか?』
「……はい」
『では連れて来てくれ、ブラウン君。ただし、君の友人に来てもらっては困る』
「差し出た事ですが、今抱えている問題を処分する時です。友人はその道のプロの始末屋です。<人形>の始末を依頼してはどうでしょうか? ロシア人と違い足もつかず当局の目を逸らす事ができます。この期に全てロシア人に押し付ければ……」
『少し待て。考える』
ブラウンは頷き、足元で気絶しているラテンスキーを一瞥した。返事が出るまで2分ほど間があった。
『……信用できる男か?』
「……保証します……」
『では連れて来てくれ。旦那様とジュニア様は私のほうで説明する』
レスラーはそういうと電話を切った。
「命拾いしたな」
「……死神……! これでいいのだな……」
ブラウンの携帯電話は、そのまま目前にいる男…… ユージがそのままポケットに仕舞った。ユージは黙って頷き、愛用のDEをホルスターに収めた。
全てはユージの作戦だった。
ラテンスキーと<狂犬>に暴れさせ、混乱を作り出させる。サクラがセキュリティーを破壊し、無線と携帯電話を傍受して管理している。必ずウェラーかそれに近い重要人物が携帯電話を使う。それでウェラーたちの居場所を知ると同時にボディーガードを統括している人物が誰か判明する。すかさずユージが立ち入り令状で入り込み、その人物……ブラウンがラテンスキーを殺そうとする現場を押さえて逮捕し、司法取引で自陣に引きこむ。元々の作戦はラテンスキーが<マリア>までたどり着き、そこを押さえるのが第一作戦だが、今行っている第二作戦は、ラテンスキーが疑われ攻撃された時、その逆境を利用してユージが潜入する。ブラウンは半分裏社会に足を突っ込んでいる人間だ。
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