第1章

3/33
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
だからマックも重要容疑者候補のリストには、レベルCの中に載せた。コールも名前があることには気付いていたが重要度が低く見ていたのでユージには伝えなかった。  PCが同調を終えた。すぐにメールボックスを開き、ユージからのメール報告を確認する。そこにはマリアが運ばれた経緯、<狂犬>が渡米してきた経緯、ラテンスキーの一件などの報告と共に、ユージたちがラテンスキーや<狂犬>から聞いた情報が書き込まれていた。  ラテンスキーが<棺桶>を引き渡した男は、ジェームズ=ウェラーの個人秘書……ライアン=レスラーで、このレスラーの銀行記録に<マダム>の経営していた会社があった。レスラーがジェームズ=ウェラーと結びついたのは、上院委員会での活動をアピールする広告映像内で、ウェラー議員の傍に立ち緊密に会話するレスラーの姿を確認し、そこからユージたちは調べウェラー議員の個人秘書を長くやっている事を確認し、ウェラー議員を容疑者もしくは関係者だと判断した。 『ジェームズ=ウェラー議員はこの一ヶ月NYで東海岸上院委員意見交換会に週2回出席するが、NYのホテルには泊まらず片道3時間かけてインデイアンリバーレイクの別荘から通っています。夫人はデラウェアに残したまま、秘書と二人です。女好きの噂がある金持ちのウェラー議員が、別荘地でメイドも雇っていません。彼らが自分で身の回りを世話ができるとは思えません』 「成程、推理としては成立している。この短時間でよくそこまで調べた」  ユージも拓も優秀な捜査官だが、この短時間にここまで調べ上げるには専門の情報分析官が必要なはずだが…… 時々ユージはFBIの専門情報官より速い対応をすることがある。このあたりはコールも時々不思議に思うところだ。こういう場合、ユージの情報分析官は実はサクラだったりJOLJUだったりするが、その事は完全に秘密にしている。 「話は分かった。だが状況証拠だ。相手はチンピラじゃない、これで逮捕令状は取れんぞ」  ただの政治家ではない。有名な上院議員で、ニューヨーク州だけでなく彼が所属するデラウェア州の検事にも話を通す必要がある。このユージの報告が事実であっても、物証がない現段階で司法検事が令状を出すとは考えられない。もし踏み込んで何もなければ本件はマスコミにバレて大騒ぎになるだろう。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!