第1章

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 ヘリコプターなら車より圧倒的に速い。FBI・NY支局には常時ヘリコプターが2台ある。手続きは必要だがコールが了承を出せばそれほど手間はかからない。そしてユージはヘリコプターの運転免許を持っている。ちなみに拓は小型飛行機の免許を持っている。 「ヘリには乗員制限がある。目立つしあの<狂犬>が乗せられるほどをスペースはない。それに連れているところが見つかれば大騒ぎだ」 「久しぶりにヘリに乗れると思ったのに」  サクラも何度もヘリコプターには乗ったことがあるが、大半はJOLJU自作の怪しいモノだ。それ以外は何かしらの大事件の時で、遊覧飛行的なものは数回しかない。 「それよりお前はウェラー議員が今夜いるかどうか調べろ。それと別荘の内部見取り図のデーターを集めろ」 「ホイホイ」  コールが何かしらの令状を取ったとしても、普通のやり方で訪問し尋ねてもはぐらかされ追い出される事は目に見えている。ウェラー議員がほぼ黒だと判断した以上、ユージは相手が上院議員でも手を抜くつもりはない。一気に攻め確保する、突入に近いやり方でなければ現場を押さえる事は不可能だ。そしてそのためには、ウェラー議員にボロを出させるための餌が必要だった。その餌のため、<狂犬>やラテンスキーを連れて来ている。  どういう手段でウェラー議員を釣り上げるか…… ユージはすでに拓とサクラに方法を語っている。サクラは移動中にその作戦のための下準備…… 衛星での監視、セキュリティーの解除方法、郡警察への根回しなどやることは一杯あった。普段はサクラ(やJOLJU)が捜査に首を突っ込むことを嫌うユージだが、利用すると決めればトコトン利用する……これがユージの方針だ。サクラに言わせれば「自己中の極み」である。 「後1時間ちょっとでインディアンリバーレイクに着く」 「ほいほい。それまでには終わると思うよ」  答えながらもサクラの手は動いている。ユージは簡単に言ったが、サクラの仕事は普通、FBIの上級情報分析官が3人は必要な仕事量だ。さらに作戦実行するにはFBIの現場捜査官が1チーム7人は最低必要だ。それをユージと拓だけでやるのだから、相当無茶をやることになる。人員を呼べないわけではない。ニューヨーク州北部の大都市バッファローには支局もあり、そこに要請を出す事は可能だ。だが、それではユージたちが行おうとしている作戦が知られてしまう。
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