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「?!」
顔を上げる。誰もいなかったはずなのにどういうことだろうと、見上げると扉の上についた窓が開き、少女が亮太を見ている。肩から上しか見えないが、着物姿だ。
あの子だ、間違いない。だけど、こんなところの土蔵のなかに、人?
「貴方、桜の頃にも、いらしていたわ」
「あの、きみは」
「失礼しました。わたくしは小笠原春乃と申します、あなた様は?」
「……ぼくは、河辺亮太」
「よろしければこちらへどうぞ。お話しましょう」
春乃と名乗った少女が手招きする。それに招かれるようにして亮太は立ち上がると土蔵へと近づいた。その途端、急に太陽が雲に隠れ、辺りがうす暗くなった。
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