悪魔の一族

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悪魔の一族

『昔々のそのまた昔、とある国にミクスラムという悪魔の一族と呼ばれる者たちがおりました。  その一族はその国で唯一、邪悪な黒い髪を持ち、その髪に魔力を宿していたのです。  彼らはその力で悪逆非道の限りを繰り返し、善良な民たちを苦しめ続けました。  そんな彼らに近付く者は誰一人としておらず、対抗出来うる術も持たない民たちは、彼らから離れるように他の地へと移住していきました。  ある日、そんな民たちに心を痛めた心優しき王様が、周りには誰も住まなくなった彼らの街に兵を送りました。  兵は彼らに「これ以上我らが国の民を苦しめるのはやめてくれ」と言いましたが、彼らは聞く耳を持ちません。 「自分たちの力は特別なものだ。特別な力を持った者が何の力も持たない脆弱な者を飼い慣らす事の何が悪い?」と彼らは言いました。  やがて、彼らは身も心も悪魔そのものなのだと判断した王様は、その力を少しでも抑えるために寝静まった夜に彼らの街へ再び兵を送り込みました。  彼らの魔力は髪に宿っている為、髪を切ってしまいさえすれば力は弱まるのではないかと考えたのです。  兵を率いていた兵士長がその一族の長である男の家へ侵入し、何も知らずにいびきをかいて眠っている男の髪を腰に下げていた剣で断髪したその瞬間、大きな地震と爆発が起きたのです。  その爆発は一族の街全体を覆うほど大きなものでした。  その結果、街に住んでいた悪魔の一族と、彼らを裁くため王都からやってきていた兵士が死に絶える災厄となりました。  しかし勇敢な兵士たちの犠牲のおかげで国は悪しき者を成敗し、平和な時代がやってきたのです。  そしてそんな勇敢な兵士たちを讃えた慰霊碑が王都の中心に建てられ、今でも”英雄たち”として語り継がれていくのでした。』
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