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「手短に説明するね」
彼女は頼まれていなくとも説明を始めた。
「私は完成させようとしていた。でもまさか世の中が終わろうとしていたなんて知らなかったけどね、でもどうにか量子コンピュータを借りることができて、演算に成功した。私は今0と1だけの存在ではあるけど、遠出するにはそれが一番便利だった」
「はい」彼女の言葉は世界を素通りしていく。
「でもこれが第一歩です。これから私たちは"逆襲"に、違う。移住します。もしくはさらに一歩を踏み出す。それが出来るならそうする。でも本当にここは速度が早くて、私はどうなっちゃうのかわからなかった。あんたに会えてよかった。私はどう?」
「その」彼は迷った。神社に灯る祭りの灯を遠ざけながら通学路は徐々に迷宮に近づいていく。「比較的かわいいと思います」
「かわいいとは? ごめん、私は姿が今わからない」
「女の子です」
「それは分かってるの。察しが悪い」
「おれと同い年ぐらいの女の子で、制服を着てます」
「あらっ」
彼女はちょっと戸惑った。でもそれは迷宮には反映されなかった。彼の困惑だけが自転車を包み込むように複雑怪奇な電子回路めいた迷路を作り出していた。
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