作品サンプル

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 爆発した。血潮の速度で流れる情報が取った手を伝って彼の利き腕をショットガンで弾かれたかのように粉々に打ち砕き花火のような閃光を飛び散らせた。凄まじい高熱に怯んだ彼は手を放そうとしたが、その頃には既に手は吹き飛び、影のようになって壁に焼付いていた。同時に怯んだ頭に向かって脊髄反射の速度で流れ込んだ色、それは今まで目を閉じて頭の中で暮らしていた人が突然青空の下に引き摺り出されて瞼を切り取られるかのような衝撃だった。世界は一度も停止していたことなどなく、限りなく停止に近い速度で物凄いエネルギーを保ったまま流れて続けていた。叩きつけられるみたいに思い知らされた彼は全身の瞳という瞳から涙を流した。なぜ世界が終了されるまで現状の人類が愚か者だったのかを知ってしまった。彼らは余りにも鈍感で、依存症だったのだ。彼女はそうではない。遠いところから、二進法を伝って途方もない時間を掛けてやってきたのだった。その情熱と、焦がれるような極彩色は彼の触感の処理能力を完全に超えていた。情報の逆流を受けた彼の脊髄は悲鳴を上げて赤熱した。既に目は閉じかけていた。  だが彼女はそこに居た。まだそこに居た。それは見えた。
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