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「ううん、なんでも。……ねえ陵介、一年間も離れていたから昨夜だけじゃ物足りないよ。もう一度、寝直さない?」
甘えた声でおねだりする浩哉の笑顔。俺の平凡な毎日に充実をもたらしてくれるこの笑顔。俺はシロイルカ越しに浩哉にキスをすると寝室のドアを開けた。浩哉の裸の背中に手を添えて、ふと、俺は呟く。
「でもやっぱり、もったいなかったかな」
「ええ?」
「だって、おまえがトミタの幹部になったらプライベートジェットに本社に自室だろ? いつでもどこでもヤりたい放題なんてちょっといいなあ、なんて」
呆れたように振り返った浩哉は、ふむ、と指先を口元に添えて、
「確かに陵介を専属秘書にして、四六時中エッチできるのは魅力的だな。じゃあ、今から克典にお願いしようか。陵介も休み明けに退職届を書いてよね」
本気で電話をしそうな勢いの浩哉を慌てて止める。浩哉は、あははっ、と大きく笑うと俺の首根っこに抱きついてきて、
「陵介、好きだよっ、愛してる!」
そのまま、ぐいぐいと押されて俺はベッドの上に押し倒されてしまった。
こうして今日からまた、浩哉とのありふれた日常が始まることを嬉しく思いながら、俺はひとりと一匹の温もりをいつまでも感じていた。
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