日常2

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 レンズの向こうの瞳をちらりと俺に向けて恥ずかしげに俯き加減になった浩哉の様子で、俺はこれを自分がきつく吸いつけたことを思い出した。 「あー、すまん。つい、盛り上がっちまって」 「まあ、明日も休みだから一日あったら消えると思うけれど……」  確かに場所が悪かった。もし明日が仕事なら、ワイシャツの襟でも隠せない位置にあるから目敏い人にはバレるだろう。浩哉は俺の手から離れると鏡に近寄ってまじまじとキスマークを確認する。その眼鏡越しの視線が転々と鏡の表面を移動した。 「うわ、こんなところにも? 結構たくさんつけてくれたね、陵介」  浩哉が苦笑いで俺に振り返った。だが、俺は先ほどから疼いている自分の熱を放出したくて、振り返った浩哉を抱きしめると首筋の赤くなった肌をまた強く吸った。 「陵介っ!? もしかして……?」 「うん。明日の夜はしないからさ、これから一緒に風呂に入って、さっきの続き」  ええっ、と浩哉が驚きの声をあげた。その浩哉の首元にぐいぐいと頭を押し当てる。 「もう、陵介ってば。……やっぱりその甘えるところはシロイルカに似ているよ」  ぽよんとした頭の笑ったような口をしたシロイルカ。  いいや、あいつらに似ていても。それで浩哉が俺を優しく抱きとめてくれるなら。 「……でも風呂は別々だよ。それから部屋はエアコンかけて閉め切ってよね」 「ああ、いいよ。だからまた、かわいい声を聞かせてくれよ」  もう、と浩哉は呆れた顔をしたあと、にっこりとあの柔らかい笑顔を浮かべて俺の唇に自分の唇を重ねた。  ――翌朝。  玄関先から新聞を取り込んできた浩哉に、ふわあ、とあくびをしながら「おはよう」と挨拶をする。 「うん、おはよう、陵介」  なぜか浩哉は何か考え込んだ顔で俺に新聞を手渡す。そして朝食の準備を始めたが、まだ小首を傾げている。 「浩哉、どうしたんだ?」 「あのね、さっき新聞を取りに行った時にお隣りの奥さんと会ったんだけれど、なんだかちょっと様子がおかしくて」
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