347人が本棚に入れています
本棚に追加
隣りは俺の両親よりも少し年代が下のご夫婦だ。でも、長く隣り同士だから互いにトラブルもなく関係は良好だ。浩哉がうちに住むようになったときも挨拶に行って、気のいい奥さんはにこにこと応じてくれた。
「いつもなら明るく挨拶をしてくれるのに、今朝はなんだかちょっとよそよそしいというか、避けられてるというか……」
「ごみの分別とか間違ってないよな?」
「うん」
「じゃあ、ちょっと腹の調子でも悪かったんじゃないか?」
呑気に新聞を拡げて言った俺に、そうだねと浩哉は同意して朝食の準備を進めた。そのときの奥さんの様子がおかしかった原因が分かったのは数日後、奥さんが貰い物のマスカットをおすそ分けに持ってきてくれたときだった。
「あのねえ、津川さん。お二人が仲良しなのはとても良いことなんだけれど、少し夜の声は小さくしたほうがいいわよ……」
――まさか、浩哉のアノ声がダダ漏れしてたっ!?
俺は奥さんに平謝りをして、理解のあるお隣りに恵まれたことを心の底から感謝した。
最初のコメントを投稿しよう!