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そう言って、本宮君は微笑んだ。
端正な顔立ちを揺らめくキャンドルの淡い光が照らす。
ドキッと鼓動が波打った。
いつもは仕事で慌ただしいけど、今は完全なフリーだから、つい二人きりでいることを意識してしまう。
「よ、夜の海も綺麗だよね!」
うるさい鼓動を落ち着かせようと、彼から視線を逸らすと、海の方を見ながら本宮君に言った。
「そうねぇ。昼間とはまた違う雰囲気で、落ち着くわよね」
彼も海へ視線を向ける。
二ヶ月程前、依頼で夜のクルーズに乗り込んで以来、夜の海には来ていなかった。
今は……仕事とは関係のないプライベート。
本宮君は深い意味なんて全然ないんだろうけど、私にとっては大切な時間……。
「お待たせしました」
先ほどの店員が、二つのカクテルを持ってきた。
「じゃ、乾杯しよっか」
「うん」
「乾杯」
本宮君の言葉に、私はマルガリータのグラスを手にすると、彼のグラスにそっと傾けた。
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