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うちの事務所に来た時の太郎君のお母さんの言葉が過った。
「私が出ていけなんて言ったから……」
そう言った彼女の頬には、一筋の涙が流れていた。
自分の言った一言で、太郎君がいなくなったと思っていて後悔してるのが伝わってきた。
(早く見つけてあげたいな)
夏とはいえ、段々暗くなりつつある。
もう一晩太郎君は帰ってない。
今日中には探しだしてあげたい。
心の中では太郎君だって、きっと家に帰りたいと思ってるはずだ。
そんなことを思っていると、不意に隣の本宮君が立ち上がる。
「あれは……」
そう呟いた本宮君の視線の先には、木立が見えた。
彼は服からスマホを取り出すと、ある画像を画面で確認する。
それは山田さんからメールで送ってもらった太郎君の写真だった。
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