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入り口の向こうに両手を広げて立っている本宮君の姿が見えた。
「……!」
太郎君が驚いて思わず足を止めた瞬間、彼の背中にぎゅっと手を回す。
太郎君が、私の腕の中でジタバタと暴れた。
「太郎君、おとなしくしてっ」
そう言うと、彼はこちらを睨み付け、唸るように低い声を出す。
「太郎君」
不意に本宮君が太郎君に優しく呼び掛けた。
そして、太郎君の頭をそっと撫でる。
すると怒りを顕にしていた太郎君の表情が和らぎ、大人しくなった。
(私への態度とえらい違うわね……)
ちょっと府に落ちないけど、まあ無事に見つかって良かったよね。
太郎君は私から離れると、本宮君の側に行く。
「お母さん、お父さんが待ってるわよ。一緒に帰りましょ?」
本宮君がそう言うと、さっきの暴れっぷりが嘘のように静かに本宮君の隣で歩き出す太郎君。
私への態度の違いは一体何なのと思いながらも、私も彼らの後に続いて戻っていく。
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