序幕:createur

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序幕:createur

「――なんて、屈辱だっ! どうして、どうして誰も気づかないんだっ!」 ガラスケースの中で、鑑賞の目にさらされ鎮座する一つの美術品。 恍惚の表情、眼差し、感嘆の溜息、騒めきの許されない静寂の空間においてなお、小さく交わされるのは称賛の声。 彼には、それが耐えられない。 「それのどこが美術品だ……! どこからどう見ても、できそこないの未完成品ではないかっ!!」 彼にとって、未完の作品を完成品として人々の目にさらされることは、屈辱以外の何ものでもなかった。 だが悲しいかな、彼の音なき叫び声は、その場の誰にも届かない。 否――ただ一人 ***
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