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「I'm looking at the clouds.(雲を見ているんですよ)」
彼はまた空を見上げながら言う。
「クラーズ?」
私は最後の単語がしっかり聞き取れなくて、意味も分からなかったので聞き直した。
「クラーズ。クラウド。日本語で『雲』ですね。雲を見ていたんですよ。」
今度は私の方をしっかり見て言った。
私はキョトンとしてしまった。
英会話スクールでは、レッスン中は原則日本語禁止。
リックが日本語を喋っている。
何だか変な感じ。ううん、新鮮。
「リック、日本語話せるんですか?」
「Sure.(もちろん)ボクは日本生まれの日本育ちですから。」
ニカッと白い歯を見せて微笑む姿は、英会話スクールで見せる笑顔とまた違う笑顔。
まるで少年のようだった。
━━━━カワイイ。
確かリックは私より10歳以上は年上だったと思うけど。
その笑顔を見て、私の心の声が本当の声として口から漏れてしまっていたんだろう。
「こら、年上に向かって『カワイイ』はないですよ。『カッコイイ』か『ハンサム』って言って欲しいですね。」
「ふふっ、今どき『ハンサム』なんて言葉使いませんよ~。なぁんだ、リックは日本語ぺらぺらなんですね。雲を見るのが好きなんですか?」
今度は私が空を見上げて尋ねた。
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