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私は財布を持ち、引き籠っていた部屋を飛び出してドラッグストアへと走った。
フラフラするけれど、そんなこと構っていられない。
目的の物を購入して家に戻り、トイレへと駆け込んで検査をした。
結果が出るまでの時間がとてつもなく長く感じられた。
でもそれは……身に覚えのあることは、その結果により確信に変わり、私を立ち直らせる材料となった。
後日、母に連れられて行った産婦人科でも「おめでたですね」と言われ、私は迷わず出産することを選んだ。
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「陸都、ここでね、パパとママはおしゃべりをい~っぱいしたのよ。パパは空を見上げて雲を見るのが大好きだったの。
あれは……」
もうすぐ1歳になる息子をベビーカーに乗せて、あの公園に来ている。
私はベンチに座って空を見上げた。
私が指差す雲は、リックが好きだった鶏の唐揚げの形に似ているかも?
もう私は大丈夫。
息子という欠けがえのない宝物と、左薬指にはブカブカなんかじゃなく、またピッタリに嵌まった指輪をリックは残してくれたから。
そして空を見上げれば、そこにはニカッと白い歯を見せる少年のような笑顔のリックが、私たちを見守っていてくれていると信じているから。
END
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