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「『ハンサム』はれっきとした英語ですよ。スペルは『H・A・N・D・S・O・M・E』覚えておいてくださいね。」
「あ、はい……」
リックに指摘されて恥ずかしくなり、見上げていた顔を一瞬彼の方へ向けてそう返事をしたあと、俯いた。
そうだったんだ……れっきとした英語。
覚えておかないと。
「雲って色々な形に見えて面白いでしょう?おにぎり、綿菓子、アイスクリーム、ドーナッツ、魚。あ~、食べ物ばかりですね。」
恥ずかしくなった私の気持ちを知ってか知らずか、リックは空を見上げクスッと笑って雲を追いかける。
私もまた自然と空を仰ぐ。
「ふふっ、本当ですね。おもしろーい。大人になってから雲をしっかり見るなんてあんまり無かったなぁ。」
あ、あの雲、亀みたい。
甲羅から首と足をグーンと伸ばしてる感じ。
雲は様々な形に少しずつ変わっていく。
その場に留まることなく。
「マリナは今からランチですね?」
「はい。あ、ベンチを探してて……」
雲の流れを夢中で見ていたら、本来の目的を忘れそうになっていた。
私はお弁当箱が入っている保冷バッグをリックの目線まで上げて見せた。
すると「ココどうぞ」と自分の隣をポンポンとして、私に座るように促した。
「その唐揚げ、美味しそうですね。」
私がお弁当の蓋を開けて食べようとしたらリックがそう言うので、そっと彼の方へ向くとニコニコして鶏の唐揚げを指差している。
この唐揚げは昨日の夕飯のおかずの残り物。
私が作ったものだ。
「た……べますか?」
「Yes!食べまぁす!」
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