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「どうぞ」と言う前に横から指が伸びてきて唐揚げを一つ摘まみ、一口で食べてしまった。
私は彼が咀嚼し終わり、指に付いた油を舐めとるまでを瞬きもせずずっと眺めていた。
その流れが何だかとてもセクシーで、ドキドキしてしまった。
「Delicious.(美味しい)」
またこちらを見てニコッとするから、私は「サンキュ」と小さい声で言って俯いた。
「雲が食べ物ばかりに見えてたからお腹空いてたんですね。」
お弁当箱の中身を箸でつつきながら照れ隠しで聞いた。
「ううん、ボクは家を出る前に食べてきましたよ。マリナのお弁当がずっと前から食べてみたかったんです。」
えっ……それってどういう……?
私がこの公園でいつもお昼を食べることを知っていたような言い方。
ドギマギする横でリックは「See you next lesson!(次のレッスンで会いましょう)」と私の頭をポンポンとして立ち上がり、公園の出入口へと歩いていった。
片手をズボンのポケットに入れて歩く姿は、まるでモデルさんのウォーキングを見ているようだった。
その姿が見えなくなるまでポーッと見つめていた。
はっ!早く食べてしまわないと……
昼休みの時間が終わってしまう。
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