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広海の進路が決まらないまま、文化祭まであと一週間になった。
文化祭に発行する新聞の追い込みに忙しい広海は、新聞部の顧問に呼び出された。
「はぁ?!なんですか、それ!」
驚いて固まった広海に、
「じゃ、よろしこ」
と、肩を叩いていく顧問を、広海は力の限り睨んだ。
顧問は今年の文化祭のメイン記事に、
女子人気ナンバーワンの駿一のことを書くように命じたのだ。
すでに文化祭用の記事も写真も揃い、あとは印刷するだけだったのに。
「ムカつく~っ!こっちの苦労が全部パーじゃん!」
怒り心頭の広海は、職員室に戻っていった顧問に文句を言いに行こうとし、扉の前で立ち止まった。
廊下の先を、女子に囲まれて歩く駿一の姿が目に入ったのだ。
「イケメン、か……?」
女子たちが追い駆ける中、颯爽と歩いてくる駿一は、確かにイケメンだ。
ぼーっと駿一の姿を見ていた広海は、突然目の前に現れた駿一の顔を見て驚いた。
「ゲッ」
「あんた、邪魔」
駿一が、職員室の扉の前にいた広海に文句を言った途端、女子たちが広海を突き飛ばし、
扉を開けた。
「甲斐先輩、どうぞ」
ウットリと駿一を見つめる女子たちの間を抜け、駿一が職員室へと入っていく。
突き飛ばされて床に倒れた広海は、その光景を呆然と見ていたが、
どうしようもない怒りがフツフツと湧いてきた。
「何様だっつーの!」
怒りに燃える広海は、サッと立ち上がり、部室へと走った。
息を切らしながら部室の扉を開けた広海は、
「やってやろうじゃないの!」
と叫んだ。
後輩部員たちの中心で、カメラの扱い方を教えていた香奈が驚いてカメラを落としそうになる。
「な、なにを……?」
部室内にいる人間全員が広海の言葉を待つ。
「チャラいくせに、ドSでムカつく男の正体を暴いてやるのよっ!!!」
こぶしを振り上げて叫ぶ広海に、
香奈と新聞部部員たちは、「はぁ……」と言うしかなかった。
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