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新聞部部長の最後の仕事が、駿一の特集記事になり、広海は張り切っていた。
「あんなヤツのこと書くのは心外だけど、日本中の女子が幻滅するような記事を書いて、
砂浜からファンをひとり残らず去らせてやるっ!」
駿一の評判を落とすことに燃える広海に対し、香奈は駿一のカッコいい写真を撮ろうとウキウキしていた。
さっそく広海と香奈は、駿一に張り付いてまわり始めた。
学校では、授業を受ける駿一を望遠レンズで外から激写し、
廊下を歩く姿、登校する姿、昼に弁当を食べる姿、ビーチバレーをする姿……と、
駿一コレクションが増えていく。
夢中で撮影する香奈が、男子トイレにまで乗り込みそうになるのは、さすがに広海は止めたが。
広海と香奈は、駿一が自宅の玄関を出た瞬間から帰宅するまでを追う日々が、過ぎていった。
四六時中、駿一のことを追っていた広海は、
やがて駿一が、自分が想像するような男ではないかもしれないと、思うようになっていた。
広海は、女の子たちの歓声を浴びながら、ビーチバレーをする駿一に、広海は悪印象しか持っていなかった。
けれど、いざ取材を始めてみると、駿一のビーチバレーをする姿の美しさ、努力する姿勢に、目を奪われるようになった。
「ただのチャラ男じゃないのかも……」
少しだけ駿一を見直し始めた頃、広海は本人と話をしたいと思い、取材を申し込んだ。
が、駿一から返ってきたのは、
「取材なんて、ムリ」
というツレナイ言葉だった。
駿一は、誰に対しても冷たく、ファンの女の子たちにも優しくはない。
だからといって、徹底的に無視するわけでもなく、写真を一緒に撮られるようなことはなかったが、携帯を向けられれば、好きなように撮らせていた。
だが、広海と香奈がビーチバレーの練習をする駿一にカメラを向けると、絶対に撮らせてくれない。
どの方向からも、うまく逃げてしまう駿一にムカついた広海は、香奈からカメラを借り、駿一が気を抜く瞬間を狙うことにした。
「人間が気を抜く時って……やっぱあの時よね」
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