第一章 しらす女とBV男

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広海は、シャワー室の前に潜み、着替えをする直前の駿一の素の顔を激写しようと考えた。 練習を終え、駿一がシャワー室にやってきた。 こっそり撮影しようと待ち構えていた広海が駿一に向かってレンズを向けた時、 「ワンッ!」という犬の鳴き声が聞こえた。 見ると、広海に向かって、釜本の飼い犬『ひろみ丸』が猛ダッシュで走って来た。 「ぎゃーーーーーっ!」 「うわぁぁぁーーーっ」 広海が『ひろみ丸』から逃げようと立ちあがった瞬間、 突然現れた広海に驚いた駿一が、驚いてシャワー室から飛び出た。 その時、人差し指がカメラのシャッターボタンを押していたことに、広海は気づかなかった……。 パンツ一枚の駿一の写真を激写してしまった広海は、頭を抱えた。 事故とはいえ、ボクサーパンツ一枚の駿一の姿をさらすのは、マズイ。 広海は画像をこっそり消し、無かったことにするつもりだった。 が! その画像は、香奈の用心深い性格のおかげで、別の保存カードに移されていた。 香奈は、勝手にスクープだと喜んで、画像を印刷に回してしまい、駿一の“パンイチ”写真は新聞に載ってしまった。 『ビーチボーイのありのままの姿!』の見出しに、 女子生徒だけじゃなく、駿一ファンは殺到した。 おかげで校内新聞の増刷という、あり得ない事態になった。 駿一のパンツ一枚の写真を世間にさらしてしまった広海は、罪の意識から、 初の新聞増刷を素直に喜ぶことができない。 新聞が発行されて一時間も経たないうちに、新聞を見た駿一が激怒し、新聞部に乗り込んできた。 「浜崎広海は、どこだ!!」 怒る駿一は、 「二度と新聞部の取材は受けないからな!」 と広海を怒鳴りつけた。 悪かったとは思うが、もとはと言えば、駿一が取材をさせてくれなかったから起きたこと。 頭に来た広海は、 「そっちが、写真を撮らせないからじゃないの!」 と、怒りをぶつける。 あわや掴み合いの喧嘩に発展しそうになったところで、新聞部の顧問が現れた。 顧問が駿一に謝り倒し、なんとかその場は治まった。 だが、駿一の半径3メートル以内には近付かないという約束を、駿一と顧問が勝手に取り交わしてしまった。 広海は、「全面的にお前が悪い」とハンコを押されたような約束に納得できない。 放課後、広海はビーチバレーの練習をする駿一に直談判しようと、海に向かった。
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