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プロローグ
「おじさん、死んじゃダメだよ!」
浜崎広海は、波打ち際で倒れていた男・釜本元の頬を叩いた。
「ブホッ」
海水を吐き出し、息を吹き返した釜本は、自分が幼い少女に助けられたことを知った。
「海で死んじゃダメ。海は、おさかなが生きる場所なんだから」
広海にとって生まれ育った湘南の海は、
守りたい場所であり、この先ずっと生きていきたい場所だ。
その大切な場所で死んで欲しくないと言われた釜本は、
広海の『生きる場所』という言葉に、ハッとした。
そして、じっと釜本の顔を覗き込む広海の顔をじっと見つめた。
遠くで誰かが呼ぶ声がして、広海は立ち上がった。
「ばいばい」
広海は釜本に背を向け、友達が待つ方へと走っていった。
釜本は広海の後ろ姿を、いつまでも見つめていた。
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