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像の、手に見える所から水が涌き出ていて、光が当たってキラキラと光っていた。
噴水の周りは広場だ。あちらこちらでいろいろな人が自由に過ごしている。
芸人が、色とりどりの球を投げる芸をしていた。
小さな子供や、その親がニコニコと笑顔でそれを眺めている。スェマナはその集団を、噴水越しに見ていることしかできない。
「あの、お嬢さん。すまないけど、領主館てどこかな?知ってる?」
ふいに、声がかけられてスェマナははっとした。
お嬢さん、だなんて呼ばれ方がくすぐったい。
「領主館、ですか?」
少しの寄り道は可能だろう。随分と身なりのよいその男性を、スェマナは領主館が見える辺りまで送り届け、タハナフの宿へ帰った。
タハナフには、帰りが遅いとぶたれた。
「……ごめん、俺が守ってやれなくて」
ヤヅァムが辛そうに顔をしかめる。その手は、じんじんと痛んでいた頬に当てられている。
「ううん。ヤヅァム、こうやって魔法で痛いの治してくれるでしょ?それに、部屋の明かりとか、暑いのも寒いのも良くしてくれる」
一人でない、ということがスェマナの心の支えだ。
ヤヅァムの魔法は凄いらしい。とだけスェマナは知っている。
そんな凄い ヤヅァムが、あたしの味方なんだ。
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