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「何故こんな真似をした?私はわざわざ全員が揃った状況でやる必要を感じなかった。確かにあの二人が仕出かしたことを考えれば、断罪もやむを得まい。しかし、このやり方はあまりにも茶番過ぎる。双方の家族に伝え、あちらから円満に婚約破棄をさせることも出来たはず……何故だ?」
「やめたかった……それだけですよ。」
「なに?どういう意味だ。」
「私に意味を聞かなくても、特別養子縁組制度を使い、妹を我が子として育てる決意をしたお父様になら、私の気持ちをご理解いただけると思いますがね。何故私に隠してきたのか……ある懸念があったからではありませんか?」
沈黙。
呼吸をするのを躊躇う程の沈黙が場を制し、思わずお兄様を凝視すると何故かお兄様は笑みを浮かべていた。
「なにを言っているんだ。」
絞り出すようなお父様の声が遠くに聞こえた。
内緒にして欲しい、と頼み、いずれ自分からお兄様に伝えるつもりだった。
「特別養子縁組制度の場合、戸籍には実子扱いとして記載されるが、それを知る方法はある。私が調べたことは家族の一員として当然の権利だと思いますよ。だって、私以外は周知でしょう?」
皆は知っているが、私が家族の一員ではない、その事実を自分からお兄様に申告することは躊躇われたのだ。
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