第13章

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僕は初め、咲が何を言っているのかは分からなかった。しかし、もし、神様が許してくれるのなら、僕のこの背中の十字架を降ろしても良い、そういう風な解釈に辿り着いた。 咲は、僕とやり直そうと言ってくれている?まさか、まさか。僕は頭を振った。そんな都合の良いことがある訳が無い。咲は今、佐藤と付き合っているではないか。 「友達ってこと?」 僕は、再び俯いて質問した。まだ涙が流れていたからだ。この涙は、何の印かは分からない。ただ、感動で流しているのではないのは確かだった。 「友達……。」 咲は、一瞬「えっ。」と面食らったような声を出したが、頭の中で色々と考えてるような沈黙をした。目を閉じたり開いたり、首を捻ったりした気配の後、 「うん!じゃあ、友達でいよう!」 そう言うと、僕の両手を持って握手をした。八年来の、女の子の肌だった。 僕は、嬉しいのか何なのかよく分からないまま、彼女の手を握り返した。 「ん。また、宜しく。」 とにかく、また咲の隣に居られるのなら、何でも良い。まだ、罪の意識は消えないけれど……。
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