その1 柳井君の場合

11/13

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
沈黙の後、柳井君は小さく息をつく。 「勘でそこまで断言する人は、宗那君が初めてだ。でも、ありがとうね。なんか吹っ切れた気がする」 笑ってお礼を言う彼に、俺はほっと息をつく。 「そうか、柳井君のお役に立ててよかった」 いつも彼に勉強教えてもらっているから、ちょっとしたお礼のつもり。 言葉にしないのは、自分で大きな事を言った後なので少々恥ずかしいから。 「宗那君、よかったら連絡先教えてもらっていい?」 「いいよ」 お互いに携帯を取り出し連絡先を交換すると、時間を見て柳井君が立ち上がる。 「ごめん、親が迎えに来るから先に帰るよ」 「おう、またな」 挨拶もそこそこに帰る彼の肩に、小さな柳井君がいて手を振っていたので、こちらも手を振って別れた。 彼の姿が見えなくなったのを確認して、手元に目を向ければ小さな俺と女の子がいた。 「近くまで送ろうか?」 小さな彼等は、元々本人から離れて動くことはあっても、姿が見える範囲での活動がほとんどだ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加