その2 河田さんの場合

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柳井君の話を聞いた数日後、学校は冬休みに入ったが、受験生にはのんびり出来ない。 普段学校に行く時間に塾へ向かい、給食の代わりに母親が作った弁当を持参していく。 中身は俺の好きな物を、リクエストしていれてもらうようにお願いした。 勉強ばかりで、食べる時ぐらいしか楽しみがないと言えば、母親は「私もそうだったわねぇ」と苦笑しつつ了承してくれた。 自分で言ってて少し寂しいなあと思う。 朝の寒さが厳しくなる中、早足で塾に行くと開始10分前だった。 家をギリギリに出て来てきたせいか、手袋を忘れてしまい、着いた時には手先が寒さで動かなくなっていた。 始まる前に温める手っ取り早い方法として、温かい飲み物を買って簡易ホッカイロ代わりにしよう。 お財布片手に自販機に向かえば、同じ事を考えている人が多いのか、売り切れの赤いランプが沢山ついていた。 残っている品物を見れば、ミルクたっぷりの甘いコーヒーかココアしか飲めそうなものがない。
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