その1 柳井君の場合

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俺が柳井君を知ったのは、高校受験真っ最中の時、同じ塾の講師を受けたときだ。 「眠い」 ぼそっと呟きつつ、目を軽くこする。 連日、勉強時間が多くなるにつれ、睡眠時間が少なくなり遊ぶ時間は去年と比べて極端に減った。 自分の周りも同じ様子だったけど、最近は大きくふたつに表情が分かれている。 寝不足で表情が険しくどこか疲れた様子な生徒と、同じく寝不足で表情が険しいが、時折笑顔でにこやかな顔をする生徒の2種類だった。 気付いてから注意深く様子を見ていて、違う理由を知ったのは塾の予定を携帯のカレンダーに書いていた時だ。 「もうすぐクリスマスだったか」 数日後にある12月のイベントは、受験生の俺には縁遠いものだと思ったが、周りはそうでもないらしい。 塾の休憩時間に予定を話す様子は楽しそうで、彼らの傍でも小さい人は笑顔で、服装もクリスマスカラーの服装が多い。 少し羨ましいと思うし、俺の友人達も息抜きにしてみようかと話は出たのだが、親に止められることが多かったらしく、クリスマスパーティーの予定はないらしい。
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