その1 柳井君の場合

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ただ、塾の講習はクリスマスとクリスマスイブの日は、いつもより早く終わるのだ。 受験生だとしても、たまの息抜きとして、ゆっくりしていいじゃないか。 そう話していたのは、塾で一番偉い人。 実際は、この二日間塾を休む生徒がいつもより多いらしく、塾に来ても真面目に授業を受けている方が少ないかららしい。 終わりが早い理由を聞かれて、先生方の裏話でと話した講師は、場の雰囲気を切り替える手を叩く。 「とにかく、俺の授業で今日は終わりだ。だから、もう少し集中な」 注意を促す講師に、俺は軽く頷きつつ講師の肩にいる小さな人を見てばれないよう溜め息をついた。 他の塾生と同じくクリスマスカラーの服装で、落ち着きなくウズウズしていた。 うん、先生もこの後楽しみなんだな。 説得力のない言葉を聞きつつ、俺はノートに書き写していく。 終了のチャイムが鳴って、挨拶もそこそこに講師が教室を出て行くと、俺もゆっくりと帰る準備を始めた。
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