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悪いのは、ちっこい俺で彼は悪くない。
謝る彼の顔を見て、あることに気付き少し顔を寄せる。
今更ながら男の子が誰なのかわかった。
「もしかして、柳井君?」
俺の問い掛けに、彼は大きく頷く。
小さい俺は今気付いたか、とあきれた表情で首を振る。
「いや、本人と話す機会が少ないのに、すぐに気付くのは難しいって」
抗議した俺に対して、やれやれと肩をすくめる。
この塾で同じクラスの彼は、理数系が得意で主に文系が得意な俺とは違い成績はこの塾でも上位者だ。
物静かで勉強熱心であり、人に教えるのが上手い。
個人的には、先生よりわかりやすい解説があるので、俺も時々彼に教わる。
ただ、それ以外に接点がないし、学校のことや勉強以外の話をしたことがない。
小さい俺もわかっているのに、なんとかしろと主張するのだ。
「どうすればいいんだ?」
思わず天井を見上げた俺の後ろから、遠慮がちに声がかかる。
「どうしたの? 宗那君。それと携帯」
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