2016年、夏

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 その甲斐もあってか、クラスの中での僕の立ち位置は「面白い人」ではなく「変な人」だった。このように自分を切り売りしつつ、心が磨り減るのではないかと思われるかも知れないが、なかなかどうして、僕は酷くタフに出来ていた。僕は何発ボディーブローを喰らおうともビクともしないプロボクサーであり、何発魚雷が当たろうとも沈まない不沈艦だったのだ(恐らく高校生活での数え切れないほどの挫折の内に精神が強くなっていたのだろう)  ・・・   「ただいま」と一声かけると、このところやたらと太った弟が「おかえり、メガネ君」と言ったので脇腹に軽く蹴りを入れてやった。まったく、どうしてこうも世界というのは僕に冷たいのだろう、僕はベッドに寝っ転がった。  ・・・  そんなこんなでそのまま高3になった(幸か不幸か、僕の高校は高2以降クラス替えをしなかった)のため、今日の今日、今の今まで鬱屈とした日常を送っているのだ。唯一の希望だった「大学での生活」も今や自己否定の波に飲まれ、アトランティスもかくやと言わんばかりの海底から、恨めしげに僕を睨んでいる──  ・・・    ベッドから跳ね起きた僕はいそいそと準備をしてランニングへと向かう、夏とは言え、六時を回ると流石に少しは涼しくなる、僕は出来るだけ無駄な思考を振り払い、身体を疲労させ、安眠出来るように必死に走った。  ・・・  家に帰る頃には、既に夜の帳が降りていた。そして、いつものように全てを済ませた僕は、扇風機を(僕はエアコンの風に弱い、三十分当たっているだけで翌日は腹痛に悩まされた)ガン効きにしたまま眠りについた。    
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