華知らぬ暁、灰色の子犬

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 ボスが瀬戸を振り返った。  飲み屋街の中を軽やかに歩くボスはいつも以上に機嫌がいい。  今日片がついたクソジジイは、秘書課全体の敵だった。  狩るには大きすぎたその獲物を上手く片付けられたのがよほど嬉しいみたいで、お蕎麦屋さんに入る前のミーティングから始終こんな感じだった。 「暁のダミー兼ボディーガード。  お前だって嫌ではないだろ? うん?」  ボスの言葉に、思わず私も瀬戸を振り返る。  彼はいつも通り内心の読めない無表情でボスを見上げた。  ぼんやりと焦点を失った瞳がボスを見上げ、少し視線の先がぶれたかと思うと、一瞬広がった瞳孔がキュッと一気に縮められる。  次の瞬間、私の視界から彼が消えた。
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