華知らぬ暁、灰色の子犬

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「っ!? キャッ……!!」  一瞬だけ私の肩にかかった手がグイッと私の体を引き寄せる。  だけどその力が一気に跳ねのけられて、今度は逆向きに突き飛ばされた。  細いヒールが瞬間的な力の動きに耐えきれず、か細い悲鳴をあげて折れる。  ボスが私を支えようと腕を伸ばすけれど、わずかに間に合わずに私の膝がアスファルトに落ちた。 「暁っ!!」  それでも私は見ていた。  彼が、その本領を発揮する瞬間を。  合気道の動きだとすぐに分かった。  だって小柄な彼が襲いかかってくる男達を投げ飛ばすモーションが、いつもの華の動きと一緒だったから。  同時に、思った。  それが瞬時に分かってしまうくらい、私は華に守られてきたんだって。
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