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「もう、大丈夫ですよ。
だから、泣かないでください」
「…っ、どうして、そんなこと、言うのよぉ……っ!!」
恐怖と、自分の中にあるかもしれない身勝手な思いを自覚して、どうしても声が震えてしまう。
あの事件は、私の心の奥に深い傷になって刻まれている。
私は華がいなきゃ、こんなにも弱い。
でもその華は、自分が見つけた大切な人の所へいつか旅立ってしまう。
華の好意で守られていた私は、華を引き止めちゃいけない。
華の幸せを願うなら、私はもう自分の足でしっかり立っていなきゃいけない。
だけど今の私には、それができる自信がない。
佐藤課長の存在を面白くなく思うのは、華を思ってのことなのか、自分の身勝手な感情からなのか。
それさえもグチャグチャになって、その全部が涙腺を破ってこぼれそうになる。
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