華知らぬ暁、灰色の子犬

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 反論するが、二人はものの見事に聞いてくれない。  ジタバタと暴れてみたが瀬戸の腕は小揺るぎもしなかった。  脇道を一本抜けると、そこには路駐されたボスの愛車、メルセデスベンツの黒いボディ。  迷いなくその車に歩み寄った瀬戸は、器用に私を抱きかかえたまま助手席のドアを開くと、そっと壊れ物を扱うかのように私を助手席に乗せた。  そして自身は当然のように運転席に乗り込む。 「……だから、21だって再三言ってるじゃないですか。  マスターの運転手として同行していることも、何度かあるはずなんですが」  中学生にしか見えない彼が慣れた手つきでシフトバーを操り、滑らかに車を走らせ始めた時には、驚き過ぎて私は口が利けない状態になっていた。  私が無言で驚いていることを察したのか、瀬戸は前を見据えたままポツリと呟く。 「心因性の発達障害の一種だと言われました」 「え?」 「僕の外見が、14くらいで止まっている理由です」
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