華知らぬ暁、灰色の子犬

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 唐突な言葉に、何を言われたのか理解できなかった。  それを分かっているのかいないのか、彼は淡々と言葉を重ねる。 「理由は、あまり詳しく突っ込んでほしくないのですが……  僕はそれくらいの歳の頃に、大人に強い拒否反応を示したみたいなんです。  自身が大人になることを激しく否定した。  その気持ちがあまりにも強すぎて、僕はそこで成長を止めてしまったらしいんです。  医者にも、それ以上の説明はできなかったみたいで」  自分のことを語っているはずなのに、妙に淡々とした声音だった。  そんな語り方しかできないような生き方を、彼はしてきたのだろう。  彼が血の繋がらないボスの所で養育されていたことから察するに、彼の半生は決して恵まれたものではないと思うから。 「マスターの所に来てから、色々な治療を試しました。  ですがどれも特に効果はありませんでした。  最終的な結論は『大人になりたいと強く願うようになれば、再び体も成長を始めるでしょう』という、何とも不確定なものでして」
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