華知らぬ暁、灰色の子犬

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 そのまま瀬戸は、私に向かって跪く。  ストッキングが破れた膝小僧は、まだ微かに血をにじませていた。 「ボスが言っていたダミーの話、今は断ってください。  今の僕はまだ、夏子さんに怪我を負わせてしまう未熟者だから」  その傷を、まるで労わるかのように、チロリと舌が這う。 「だから。  僕が夏子さんに見合う男になるまでは、華さんに守られていてください」 「……っ!!」  ツキリと膝から走った痛みに、繋いだ手が震える。  見上げてきた瞳には、確かに感情が宿っていて。 「せ……」  もう少しだけ、覗き込みたい。  そう思ったのに、金色の瞳は唐突に私の前から姿を消した。  ヒョンッと何かが宙を裂く音がして、グイッと体を外へ引っ張り出される。
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