華知らぬ暁、灰色の子犬

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「なっこに手を出すな、このケダモノ」  よろめいた体は何よりも慣れた熱に抱き留められた。  追撃とばかりに振り下ろされた足がアスファルトを噛む。  家でも職場でも滅多に聞けない低い声は、相手を敵と認識した証。  こうなった彼女は、大抵の人間には止められない。 「華っ!! 落ち着いて、大丈夫だからっ!!」 「なっこ、無防備っ!! 落ち着いてなんていられるかっ!!」  アラヤダ、いつもと立場が逆じゃない。  思わず目をパチクリさせている間にメルセデスベンツは急ハンドルで駐車場を出ていった。  静かな駐車場に、私と華だけが取り残される。 「あんのぉ~……っ!!  子犬みたいな外見しといて送り狼なんてぇぇぇぇええええええええっ!!」  確かに、毛並みだけだと白ポメよね、瀬戸って。 「華、佐藤課長とディナーに行ったんじゃなかったの?  やけに早かったわね」
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