華知らぬ暁、灰色の子犬

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 打ち合わせをしてからお蕎麦屋さんに行ったけれど、打ち合わせそのものが早く終わったから、ボスと一緒にいた時間はそんなに長くはない。  ディナーコースで食事をしていたら、まだまだお店の中にいてもいい時間帯だ。 「夕飯は行った。ラーメン」 「ディナーでラーメンって……」  お蕎麦屋さんに行っていた私が言えることじゃないけれども。 「どこのラーメンに行ったの? マルヒサ?」 「……豊乃香ラーメン」  華の怒りを鎮めるべく、しばらくディナーの話を振ることにした。  華は私が問いを向ければ渋々だけど答えてくれる。  そんな華の胸に甘えるように、私は華を抱きしめた。 「華があそこに私以外を連れていくなんて、初めてなんじゃない?」 「……佐藤課長に美味しいもの、食べてほしかったから」 「あら、妬ける」
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