華知らぬ暁、灰色の子犬

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 そんな生い立ちのせいなのか、余程求める理想像が高いのか、ボスにはパートナーがいない。  パーティーなどの同伴者必須の席には私が同行することが多いから、周囲には私がそういう関係なのだと思われがちだけど、もちろん私とボスの間にそういう感情はない。 「私はそういう誘いが昔に比べれば随分少なくなって楽だが、君はまだまだ引く手数多だろう?  華さんが佐藤課長と行動するようになったら、ガードは誰に任せるつもりだね?」 「少なくなったって、また御冗談を」 「君は女性で、そういう意味でも危ない。  君は秘書課にとってなくてはならない存在だ。  何かあっても困る。  必要ならば、私の所からダミーを貸そうか?」  嫌な流れになってきたなと話題を逸らしてみたのに、ボスは私が仕掛けた流れには乗ってきてくれなかった。  私が華と相思相愛演じて男除けをしているように、ボスも『ダミー』と呼ぶ偽装相手を置いて言い寄ってくる老若男女の数を減らしている。  ボスは私よりも強烈に人を引き付けてしまうからなのか、そのダミーも強烈というか、私以上に淫靡で犯罪臭がプンプンするような陣容なんだけど……
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