華知らぬ暁、灰色の子犬

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 ボスが言う通り、ボスの私設ボディーガードは複数人いる。  あくまで私設のボディーガードだから、彼らが会社内を闊歩するということはない。  だけどボスの片腕として何かと行動を共にすることが多い私は、必然的に社外でボスをガードする彼らとも顔見知りになる機会も多い。  その中でも特に印象的で、ボスがダミーとして一番身近に置いていて、結果私も一番顔を合わせる機会が多いのが、今私の脳内にチラリと浮かんだとある少年だった。 「マスター」  慌てて脳内に浮かんだその姿を消していたら、スルリと喧噪の中をボーイズソプラノが入り込んできた。  静かなのに、喧噪に溶け込んでも消えない、感情のないしっとりした綺麗な声。  その声にハッと振り返ると、私が慌てて脳内からかき消した当人が、いつの間にか私達の傍らにたたずんでいた。
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