ナナコの場合

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翌日。 適当に食事を済ませた私は、風人の迎えに着いていった。 階下の、昨日色々と検査されたそこの通り道。 「あ、ここで」 「はい」 と、風人が近くの部屋の扉を開けた。 ここは検査で入っていない部屋だ。 中を見回す。 相変わらず病院や市役所のような匂いがするが、この部屋はそれに混じったものがある。 壁全てを覆う木製の本棚と、その本やファイル達の匂い。 図書室にも見えるが、資料庫と言った方が多分合ってる。 なんたって、本棚は壁づたいにしかなく、あとは部屋にひとつ大きな木製テーブルとイスがいくつかあるだけ。 「…えっと…」 「ああ、座っちゃって下さい」 風人の横を抜け、部屋に入る。 通り過ぎさま、彼のつけている柑橘系の香水の香りが混じった。 「……で、ですね」 扉を閉め、風人は歩きながら手持ちのファイルをペラペラとし、手探りでイスを引いてそこに座る。 ガラス?製の灰皿を引き寄せながら。 「吸いますよ」 「あ、ええ、どうぞ」 断ったとしてもタバコを吸っただろうな、と私は思った。 香水をつけては居るが、彼からはタバコの香りもするし、何より、どうやらヘビースモーカーのようだ。 バシュッ。 マッチを擦る音が小さく響く。 美味そうな顔でタバコを一息吸うと、彼は右眉を上げ、左眉を下げた。 どうするかな、そういった表現である。 何回か、風人が煙を吐き出すが、言葉は吐き出されない。 仕方なく、と思いながら、私は彼に促す。 「あの、検査ってなんの検査だったんです?多分、健康には問題ありませんけど」 「え?……はい」 「?」 健康には自信がある、とまでは言わないが、私はヒドい持病もなく、あるとしたら花粉症くらいだ。 最近やった、会社の健康診断も問題なかったんだし、この『世界』での健康診断も問題あるとは思えない。 昨日、今日。 彼の言い付け通りに部屋からは全く出なかった。 ただ、窓から外を覗く事、部屋を色々調べる事は出来た。 この『世界』がどういう状態なのか、どういうものなのか、なんとなくだけど推理してみたし。 文化レベルは多分私の居た年代よりも古い。 ラジオはあっても、テレビは無かったし、シャワーやお風呂はひと昔前のものに近かった。 まあ、ラジオは何言ってるか解らないんだから、そこで文化的な何かがあったかもしれないけど。 それでも、この世界は古い、私はそう感じた
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