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私が色々考えていると、風人が煙を大きく吐いた。
タバコを消しながら。
「適性検査、っなんっすよね、アレって」
「適性…?」
適性検査。
なんのだろう。
私が眉間にシワを寄せるのも構わず、彼はゆっくり繋げる。
「なん……っつうんすかね。あの……生きるため、っていうか」
「…生きる?」
自分の心臓が跳ねるのを感じた。
イヤな予感がする。
生きるため。
もしかしたら。
もしかしたら、それは。
「ウィルス…か何か、っていうの…?」
思いが口から勝手に出た。
この『世界』が私の『世界』と本当に違うのなら。
そう。
「そういう」可能性もある。
たとえば、日本人がアフリカに渡航するのなら、予防注射をしなければならないように。
それをしなければ、かなりの確率で。
「……」
死ぬ事になる。
そういう場合がある。
同じ『世界』でもそうなのだから、その可能性があってもおかしくない。
映画の宇宙戦争ではそういうオチだった。
地球を侵略しに来た、圧倒的に科学力に長けた宇宙人が、地球人ならなんの問題もない空気、それに対応出来ずに死んでいく、という。
その可能性が、今、私に降りかかっているのだ!
心臓のバクバクが止まらない。
目が泳ぐ。
やがて。
どれだけ時間が経ったかは解らない。
むしろ、ほとんど時間は経っていなかったかも解らない。
風人がまたタバコに火を着ける。
「…いや、そういうんじゃあないんっすよね。別に」
「は?」
私からマヌケな声が飛び出した。
「多分、ナナコさんが心配してる…っていうのは、アフリカとかそういう感じの事っすよね?」
脂汗をかき、マヌケな顔をしているだろう私の返答を待たず、彼は続ける。
「そういうんじゃあないんですよ、ね。生きるための、っていうのは、そのまんまの意味です」
「そのまんま?」
「言ったでしょう?最初に」
「最初に?」
考えが違っていたせいで、私は頭がパンクしてオウム返ししか出来ない。
「適性検査だ、って。つまり、生きるための適性ですよ、この『世界』での」
彼の言っている意味がよく解らない。
彼の言っている違いがよく解らない。
「この『世界』、この国は今、戦時中なんですよね。もしかしたら、言い忘れてたかもですけど」
「……」
「だから、生きるため」
「……戦争!?」
気付いたら叫んでいた。
そんな非日常的な単語をただ。
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