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「?…何止まってんだよお前」
笑いながら、俺はマサユキに近づいた。
マサユキは、道に差し掛かった辺りで止まっていたが、すぐこちらに振り向いた。
「んだよ?」
「ア…アレ、なんだ?ちょっとお前も早く来いってヒロト、なんか変なんがいる」
変な事をいきなり言う。
この辺に居るのなんて、野良猫くらいしかあり得ないだろう。
野良犬は昭和?とかその辺には結構沢山居たみたいに漫画とかドラマで見た気はするけど、平成の今、この町で見掛けた事は一度も無かった。
「んだよ、野良犬でも見つけたのか?」
「良いから来いってば」
手招きするマサユキだったが、その声は小さい。
その動物だか生き物が逃げないよう気にしてるんだろう。
というなら、本当になんかそこに居るんだろうな。
俺は思いながら、でも別に急がずにマサユキの方へと近づいて。
近づいていった、その時。
いや、近づこうと数歩も進んでいなかった。
「ひゅえっ!?」
『ドン!』
マサユキが変な声を出した。
いきなり氷水でもかけたらそんな声を出したりしそうだな、とは思う。
そして、次いで聞こえた音。
車に人間がぶつかられたならそんな音がしそうだな、とは思う。
「ひっ…ヒロ……ふゅっ…」
ヒロトは完全に固まっていた。
目の前の事がよく解らなかったからだ。
目の前には、確かにマサユキが言ったように何かが居た。
動物、生き物、どちらで言えばいいのか解らない。
それは、サイみたいな体の形をしていた。
だが、体はバイソン?だかバッファロー?だかみたいになんか汚い毛、コケみたいな緑色をした汚く臭そうな長い毛が生えている。
大きさは軽自動車のワゴンタイプくらいか、それよりも体は少し長く見える。
そして、どうやら目の前の『アレ』には角かなんかが生えてるというのも解った。
「ヒロト…ヒロ…なんっ…コレっ…」
いきなり現れた『それ』にマサユキは体当たりを食らい、でも吹っ飛んでいない。
口をパクパクさせたマサユキの体は『それ』の頭の部分にくっついたままだ。
だから多分、角かなんかが刺さってる。
血まみれのマサユキのその腹に。
今。
俺が考えている今も。
その角がマサユキの体から血を外にどろどろと流し続けていた。
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