ヒロトの場合

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ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。 一瞬だけ立ち止まり、俺は辺りを確認した。 公園の中にあるものである。 ブランコ。 小さいすべり台。 ベンチ。 噴水みたいに出る水飲み場。 砂場。 トイレ。 頭をぐるぐると考えが回る。 どうしたらいい? どうしたら逃げられる? ブランコを『アレ』が来たら当てて攻撃するか? 意味がない。 多分効かない。 すべり台に乗ってやりすごすか? ダメだ。 あの高さじゃ、すべる方から登ろうとされただけで多分体当たりを食らうし、何よりそんなに頑丈じゃあないように見える。 ポリが来るまで待ってられないだろう。 アイツらは俺らみたいのをすぐ補導しにくるクセしやがって、こういう大事な時には来ない。 考えながらも、時間が無いのは解っていた。 あそこだ。 あそこしかない。 地面を蹴り、砂を撒き散らしながら、俺は全力でそこを目指した。 俺が助かるのは多分そこしかない。 全力で目指すのは。 そう。 トイレだ。 『びぃぃぃいんんん…』 響き渡る音に俺はまた振り返る。 入口のポール、そこに『それ』が体当たりをしていた。 やっぱりだ。 「やっぱりジャンプなんて」 言葉が詰まる。 少し後ろに下がり、『それ』が助走をつけて。 「…っじかよ!?」 観察なんてしてる場合じゃなかった。 ジャンプしてポールを越えてきた『それ』が血まみれの角をこちらに向けている。 何故だか俺を『狙って』いるみたいだ。 俺は何もしていないのに。 俺は何もしてないのに。 数秒し、俺はトイレへ駆け込んでいた。 『アレ』が俺に追い付くよりも早く。 トイレの入口はそう狭くはなかったが、男子女子と別れる道が出来ている。 L字になったそこに『それ』は挟まっていた。 『ぶぉぉおおん!』 鼻息と酷い臭い、血と動物園の混ざったような強い臭いがする。 「んでだっ!なんで繋がんねえんだよ!クソ野郎っ!」 スマホの電波が何故か立っていない。 普段はうっとうしいだけのポリ、銃を持ってるアイツらなら、俺を助けようと『コレ』を撃てるだろう。 ギシギシと、体を壁にこすらせながら、『それ』が徐々に男子トイレのスペースに入りつつある。 背中をベッタリと一番奥の壁につけている俺に迫りつつあるのだ
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