第2章

5/5
前へ
/9ページ
次へ
「紅緒さん!」 出てきた夏目が、腕を伸ばして紅緒の手を取った。開かせたその掌に、かさりと置かれた小さな折り鶴。 紅緒の瞳が見開いた。 「お節に使った千代紙の残りですけど」 「……アリガトウ」 「日本に戻ってきたら、また店に来て下さいね。待ってますから」 頷いて潤んだ瞳が、夏目を見上げた。 「あ、除夜の鐘だ」 呟いた夏目が耳をそばだてた。しんと冷たい冬の空気を揺らして、鐘の音が響いてくる。 「今年はいろいろあったな……君にも迷惑をかけた」 「そんなことないです。俺、秋月さんの役に立てば、それで」 視線を交し合う二人に葛見が苦笑する。無言で紅緒を促すと、歩き始めた。 「新年、あけましておめでとうございます」 「おめでとう……今年もよろしく頼む」 はい、と白い息を吐きながら、黒い瞳が大きく笑った ********************************************************** >第11話 睦月 に続く
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加