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「紅緒さん!」
出てきた夏目が、腕を伸ばして紅緒の手を取った。開かせたその掌に、かさりと置かれた小さな折り鶴。
紅緒の瞳が見開いた。
「お節に使った千代紙の残りですけど」
「……アリガトウ」
「日本に戻ってきたら、また店に来て下さいね。待ってますから」
頷いて潤んだ瞳が、夏目を見上げた。
「あ、除夜の鐘だ」
呟いた夏目が耳をそばだてた。しんと冷たい冬の空気を揺らして、鐘の音が響いてくる。
「今年はいろいろあったな……君にも迷惑をかけた」
「そんなことないです。俺、秋月さんの役に立てば、それで」
視線を交し合う二人に葛見が苦笑する。無言で紅緒を促すと、歩き始めた。
「新年、あけましておめでとうございます」
「おめでとう……今年もよろしく頼む」
はい、と白い息を吐きながら、黒い瞳が大きく笑った
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>第11話 睦月 に続く
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